アルムナイメンバーによる「イノベーション&テクノロジー講演会」の企画に参加・サポートしました

2023(令和5)年11月14日(火)、神奈川県立相模原中等教育学校で、「イノベーション&テクノロジー講演会」が開かれ、日産財団と日産自動車がサポートしました。この講演会は、未来のリーダー教室アルムナイメンバーである中学生が企画し、同学年の中学生たちが受講するもの。生徒たちは、イノベーションと工学哲学の講義に参加するとともに、日産自動車のクルマを試乗体験。特別な時間を過ごしているようすでした。


日産自動車スタッフからのクルマの説明を聞く相模原中等教育学校3年生のみなさん

この講演会は、同校中学3年の高橋春帆さんが企画したもの。きっかけは、2023(令和5)年8月の「未来のリーダー教室 展開編」に高橋さんが参加し、ゲスト講師の日産自動車エキスパートリーダ上田哲郎さんの講演などに感銘を受けたことにあります。学校での探究活動に向けて「新しい角度から考える力」を同学年のみなさんと身につけたいと考えて、上田さんらを迎える講演会を企画。同校の先生たち、それに私たち日産財団スタッフらと準備を重ねてきました。


「未来のリーダー教室 展開編」での一コマ。高橋春帆さん(中央)が講演後の上田哲郎さん(左)にアプローチ

中学生たちが「未来予測」の方法を知り「システム思考」を演習

当日の14時。視聴覚室に中学3年の生徒みなさんと先生がぞくぞくと集まります。高橋さんの進行のもと、まず黒木太副校長があいさつし、生徒たちによびかけました。

「今日はぜひ、本校の『育てたい3つの力』の一つ、科学・論理的思考力を高めてください。そして、これからの自分のなかにおけるイノベーションについて考えてください」


黒木太副校長のあいさつ

続いて日産財団理事長の久村春芳が、「科学技術とイノベーション」をテーマにで講演しました。

「ピーター・ドラッカーという経営学者は、いま影のところで起きていることにフォーカスすれば10年後や20年後のことがほぼわかると言いました。未来の萌芽としていま起きていることを見つけることが大切です」


日産財団理事長・久村春芳による講演

エネルギーや人工知能を例に、「未来の萌芽」を示していきます。生徒たちははじめ緊張気味でしたが、男女の電話の声のどちらが人工知能によるものか当てたり、俊敏なロボットの動画を見て「かわいい!」と反応したり、次第に盛りあがっていきます。

生徒からの「(未来予測につながる)技術がどう生み出されるのですか」という質問に、久村理事長は「特許情報を見ればこういう技術があるとわかります。そのなかから、この技術がくると見つけだすのは、あなたです」と答えます。


生徒から質問がつぎつぎと上がった

久村理事長のものごとを整理するための「システム思考」の話を受け、日産財団常務理事の原田宏昭が生徒たちの前へ。「ツリー」「マトリクス」「ダイナミクス」という三つの思考スキルを、文化祭の「たこ焼き屋」運営に生かすという演習の始まりです。生徒から、「(流行らせるには)タコでなくイカを入れるのはどうかな」「(お客さん像について)友だちや家族と食べたい」「(当日激寒)かえって売れるかも」などと繁盛へのアイデアが出ました。


日産財団常務理事・原田宏昭による演習

「支配されないぞ」から起きる「別のイノベーション」を知る

日産自動車から参加した上田哲郎さんは、「工学哲学」の講演をしました。


上田哲郎さんによる講演。上田さんは1990年に日産自動車入社。1999年に筑波大学経営政策科学研究科で博士号(システムズ・マネジメント)取得。2007年横浜ラボ設立。2017年よりエキスパートリーダ

「イノベーションは、イデオロギーとの関係で考えなければならないもの。これまでのイデオロギーを変えようとするところに、まったく別のイノベーションが存在するはずです。(イデオロギーに)支配されないぞという姿勢をパンク(Punk)といいます。工学者は心にいつもパンクを!」

「別のイノベーションのかたちの一つが、ハイテクノロジーを使わず、ローテクノロジーで『ワオ』を起こすこと。ブリコラージュという概念と言葉をぜひ覚えておいてください。今日は、このコンセプトに基づくクルマを持ってきました。みなさんも、心にパンクを保ちつづけてください」

日本発のイノベーションのあり方をめぐる、久村先生と上田さんのクロストークも繰り広げられ、受講者からの質問も自発的に出てきました。

イノベーションを体現したクルマに乗って触れる

いよいよクルマ試乗タイムです。中庭には、自動運転の機能を備えた「スカイライン」、エンジンで発電しモーターで駆動する「ノートe-power」、理事長の久村が乗っている最新の「アリア」、そして目玉のコンセプトカーの計4台が置かれています。生徒たちは日産自動車の社員たちの説明を聞きながら、思い思いにシートに座ってハンドルを持ったり、ボンネットの中を覗きこんだりします。


「スカイライン」に興味津々の生徒たち


「ノートe-power」に試乗して楽しむ

「コンセプトカーを見せてもらえ、特別感があってうれしかったし、将来そうしたクルマが増えると思うとワクワクします」(生徒の声)

「実際にクルマに乗ったり、エンジンのつくりを見たりしたところが楽しかった」(生徒の声)


そこからどんな光景が見えますか

講演会の最後に、上田さんから「今日、見聞きしたものをもとに、どんな未来があるのかを考えてください。できれば、工学者をめざしてもらえたらうれしく思います」とメッセージがありました。生徒たちの大きな拍手のなか講演会は幕を閉じました。

「これからも挑戦していきたい」

後日、参加した生徒たちから「講師の先生が何人もいることで、さまざまな視点から物事を考えられました」「経験したことのないものが多くて楽しかった」などの感想を聞くことができました。

「未来のリーダー教室」にオブザーバーとして参加し、先生として今回の講演会を支援した高原隆先生は、「『未来のリーダー教室』のテクノロジー&イノベーションのパートがおもしろく、参加した生徒たちに聞くと、みんなもおもしろいと言っていました。そこで、学校の多くの生徒たちと共有できるとよいと思っていたところ、生徒の高橋さんがぜひ企画したいと言ってくれて、この講演会が実現しました。(高橋さんのがんばりは)素晴らしい」と話します。

最後に、企画した高橋さんに講演会を終えての実感を聞きました。

「新しいことに挑戦したいと思って企画しました。学校と企業側をつなぐ経験は初でしたが、日産財団のスタッフの方のサポートもあり実現できました。おなじ学年のみんなが興味をもってクルマに乗ろうとしている姿を見られ、やってよかったと思います。これからもいろいろなことに挑戦していきます」


感想を話す企画者の高橋春帆さん

高橋さんはじめ、相模原中等教育学校の生徒みなさん、先生方、それに日産自動車のみなさん、お世話になりました。

私たち日産財団は「未来のリーダー教室」や、その同窓会コミュニティ「アルムナイ」などを通じて、さまざまな形で若い人たちの挑戦を支援してまいります。