<開催報告>STEAM教育フォーラム −STEAM教育“導入”の障壁は何だ!?−

公益財団法人日産財団は2022年2月23日(水祝)、「STEAM教育フォーラム −STEAM教育“導入”の障壁は何だ!?−」をオンライン開催しました。このフォーラムは、STEAM教育※の重要性と、導入するときの障壁、またその解決法をテーマに、学術機関・小中学校に所属するパネリストに講演していただき、議論を深めるものです。80名ほどの参加者にご覧いただくなか、STEAM教育の実施を後押しするようなお話が繰り広げられ、充実した内容となりました。

※STEAM教育:Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術・リベラルアーツ)、Mathematics(数学)を対象とした理数教育に創造性教育を加えた教育理念のこと。

「理科教育助成」でSTEAM教育を支援

 オープニングで、日産財団常務理事の原田宏昭が挨拶し、「理科教育におけるメイントレンドとなるのがSTEAM教育」と述べ、STEAM教育がイノベーションを生み出す力の基礎を養うものとの考えを伝えました。また、2022(令和4)年度の「日産財団理科教育助成」から、募集内容に「STEAM教育」の要素を取り入れたことを伝え、「多くの学校・団体が日産財団の事業を活用し、STEAM教育を発展させることを期待しています」と述べました。


原田宏昭。日産財団常務理事。

STEAMを各教科学習と探究学習の循環で捉える

 講演では、まず、東京大学生産技術研究所の大島まり教授が、「STEAM型探究学習のススメ」という題で講演しました。


大島まり先生。東京大学大学院情報学環・東京大学生産技術研究所教授。東京大学大学院工学系研究科原子力工学専攻博士課程を修了、博士(工学)。専門はバイオ・マイクロ流体工学。血液の流れの研究に従事。東京大学生産技術研究所の次世代育成オフィス(ONG)室長をつとめ、STEAM教育にも取り組む。大島先生の講演全編を、Youtube動画でご覧いただくことができます。

 大島教授は、STEAM型探究学習の必要性について、「STEAM教育はみなさんが学校で教えている教科を横断している点が大事。『探究』がキーワードになります」と述べ、各教科などにおける学習と、 課題設定、情報収集、整理・分析、まとめ・表現を繰り返していく探究学習を循環するような捉え方が求められることを強調しました。

 そして、学校現場で実際にSTEAM教育を取り入れるには、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)のPDCAサイクルを回すことの重要性を述べました。そして、「ネットワークを拡充していくことが大事。オンラインにいろいろな教材があるので生かすなどし、先生も生徒も達成感をもてるようにしたい」と期待を伝えました。

プロジェクト型の授業で各教科のつながりを意識づけ

 次の講演では、ノートルダム学院小学校の神先雅巳教諭と梅下博道教諭が、STEAM教育導入実践者の立場から、STEAM教育をめぐる「導入時の障壁」「克服のしかた」「いまの課題」を発表しました。


(左)神先雅巳先生。ノートルダム学院小学校教諭。研究部長。(右)梅下博道先生。ノートルダム学院小学校教諭。理科担当。西日本私立小学校連合会理科部会代表。同校では、知識を活用した新たな価値を創造・発信するプロジェクト型の単元計画・授業デザインに挑戦中。神先先生・梅下先生の講演全編を、Youtube動画でご覧いただくことができます。

 まず、「導入時の障壁」について、神先先生が自身の経験を振り返り、通常とは異なるプロジェクト型の授業に転換することや、情報通信技術(ICT)機器の操作に慣れることが必要だったことを述べました。

 次に、「克服のしかた」について、梅下先生が、ICTとSTEAMのつながりへの意識を強調しました。授業だけでなく日常生活でICT活用をすることを通じて、子どもたちの情報交換を活発にしたことを伝えました。また、授業デザインとして、プロジェクト型の課題に取り組んでいることを紹介。授業例として、子どもたちが動画づくりにチャレンジしたことを紹介し、各教科がつながっているという視点をもたせられたと成果を示しました。神先先生・梅下先生とも、その単元でなにを目指すのかを子どもたちに意識させることの重要性などを述べました。

「いまの課題」については、教科横断の視点をもつことと、他教科とのつながりを教師が意識することが大事と述べました。学校外との連携や、大人も学ぶ姿勢が大事と述べました。

メンタルバリアを破るため「まずはやってみよう!」

 創価中学校教頭の池田勝利教頭は「STEAMの障壁を打ち破る 3つのキーワード」と題して講演しました。


池田勝利先生。関西創価中学校教頭。1989年、東京水産大学(現・東京海洋大学)卒業後、関西創価中学校・高等学校に理科教諭として赴任。NASAやJAXAの「TIE」「EarthKAM」「きぼうハイビジョン・アースビュー」などの教育プログラムに参加し、「宇宙」をキーワードとした教育実践を続けている。池田先生の講演全編を、Youtube動画でご覧いただくことができます。

 池田先生は「最大の障壁はメンタルバリア」との考えを示し、「持続可能な体制づくりができないか、また無料でできるプログラムがないか考えてほしい」とよびかけました。

 同校は、米国航空宇宙局(NASA)の教育プログラム「EarthKAM」を用いた教育活動をしているとのこと。池田先生は、1999年に同プログラムに応募し、選定されたことを、これまでの教育実践事例として紹介しました。

 そして、冒頭に提示した「障壁」を打ち破るための三つのキーワードを掲げました。

 一つ目は「まずやってみよう! 走りながら考えよう!」。「EarthKAM」では、生徒の発案により「太陽光反射実験」などの取り組みをしてきたことを紹介しました。

 二つ目は「子どもたちの力を信じよう!」です。生徒のなかでスチューデント・ディレクターを置き、先生の手の足りない部分について、生徒に役割を分担してもらったといいます。

 そして三つ目は「情報は発信するところに集まる」というもの。情報発信をすることで人脈がつながるなど、自身の経験を話しました。

トークセッションで「時間不足への対処法」などの工夫が示される

 ひきつづき、日産財団理事の加納圭先生と、加納先生の研究室に所属する牧澤遼さんがコーディネーターをつとめ、「トークセッション+Q&A」をおこないました。参加者からの質問を踏まえつつ、講演者のパネリストが議論を深めました。


加納圭先生。公益財団法人日産第財団理事。滋賀大学教育学系教授・学長補佐(STEAM教育・リベラルアーツ担当)兼兵庫教育大学大学院連合学校教育学研究科教授。MOOC講座「はじめてのSTEAM教育」(滋賀大学提供)の制作に携わる。NHK Eテレ「カガクノミカタ」「考えるカラス〜科学の考え方〜」の番組委員を務めた。


牧澤遼さん。兵庫教育大学大学院連合学校教育学研究科博士課程。川崎重工業株式会社航空宇宙システムカンパニー勤務。同社で、航空宇宙の電気系の設計に携わる。学生時代から子供〜大人を対象とした教育普及活動に取り組む。川崎重工内でも次世代育成に携わっており、在職のまま兵庫教育大学大学院の博士課程に進学し、加納研究室で研究に取り組む。研究対象は企業の教育CSR活動。

 まず、「STEAM教育の効果・魅力」というテーマに沿って、大島先生がコメントしました。

「STEAM教育はまだ黎明期。枠組みをつくらないほうがSTEAMらしさが出てくるのではないでしょうか。解答のない問題を“自分ごと”として解いていくことがSTEAM教育の大事な側面です。知識を横断的につなげていくこと、また、いろいろな人と情報交換し解を導くことが重要です」

 大島先生が挙げた「つなぐ」というキーワードを受け、小中学校の各先生が事例を紹介しました。

「卒業生から『気候チャンピオン』に興味ないかと声をかけられ、生徒が環境の大切さを訴える動画プレゼンテーションを行い、国内代表として世界大会に出場したことがあります」(関西創価中学校・池田先生)

「プロジェクト型学習では、子どもたちが、絵描きが得意、資料まとめが得意といった、自分の輝けるところでの役割分担をしています」(ノートルダム学院小学校・梅下先生)

「プロジェクト型学習で、子どもたちは自分ごととして考えることになり、それにより相手の立場に寄り添って考えるようにもなりました。友だち関係の構築につながっていきました」(ノートルダム学院小学校・神先先生)

 次に、「STEAM導入時に発生しうる具体的な障壁と解決方法」の事例と要点をあらためて聞きました。

「時間をどれだけとれるかは、参加者みなさんも思うでしょう。できる範囲で、たとえば20分でのテーマを設けたり、復習できるテストを1問したりといったところから始めていくのがよいと思います」(ノートルダム学院小学校・梅下先生)

「『これから3時間でつくりあげるよ』などと伝えおくと、そのなかで子どもたちはがんばるものだと感じます」(ノートルダム学院小学校・神先先生)

「情報インプットは各教科の授業で、成果物づくりを総合的な学習の時間で、そして発表は学校行事でおこなうといったように、学校全体でカリキュラムマネジメントすることで、教科の時間を圧迫することなく教育活動を進められるものと考えています」(関西創価中学校・池田先生)

「学校外と連携することが先生たちの荷重負担の解決方法としてあります。ICTを通じて、時空を超えてつながることができます。オンライン教材の活用なども考えることができます」(東京大学・大島先生)


「トークセッション+Q&A」のようす。フォーラムでは、各者の発言を即時に文字として把握できる「UDトーク」を使った。

 最後に、「早期STEAM教育の重要性」について、各パネリストがコメントしました。

「小学校と中学校、また中学校と高校の連携で、各発達段階に合わせた教育活動がおこなわれれば、学びの共通ベースができ、時間不足の課題の解決ができるのではないでしょうか」(関西創価中学校・池田先生)

「やってみることが大事です。一歩踏み出し、蓄積したものをシェアすることで、よい循環ができます。身近なところからできるところがSTEAM教育のよいところです」(東京大学・大島先生)

「学校の勉強が社会に出てから役に立つと子どもたちに言えるように、これからも取り組んでいきます」(ノートルダム学院小学校・神先先生)

「(STEAM教育が)よりよい社会になっていくための素地づくりになっていけば、子どもたちにとってもよいものにつなげていければと感じました」(ノートルダム学院小学校・梅下先生)

 最後に、加納先生が「STEAM教育の範囲を狭く捉えすぎるのではなく、より広く捉え、まずはやってみることが大事と考えています。日産財団の理科教育助成などの応援のしくみを使っていただければと思います」述べ、「トークセッション+Q&A」を締めくくりました。

「継続的なSTEAM教育を」財団への期待の声も

 パネリストとコーディネーターのみなさんに、教育現場でのSTEAMの導入に向け、さまざまな示唆に富むお話をいただくことができました。また、フォーラムでは、日産財団に対して、「継続的なSTEAM教育」を実現するための期待の声も預かりました。

 パネリスト・コーディネーターのみなさん、そして、ご視聴いただいたみなさん、ありがとうございました。

 日産財団は今回のフォーラムの成果を生かしつつ、今後、全国の学校が実施するSTEAM教育やSTEAM教育につながる活動をさまざまな形で支援していきます。どうか、日産財団の取り組みに、ご参加・ご声援をいただければと思います。