第4回 リカジョ育成賞贈呈式 レポート

 公益財団法人日産財団は2021(令和3)年7月28日、第4回リカジョ育成賞の贈呈式をオンラインで開催しました。リカジョ育成賞は、女子小中高生を対象に理系分野における興味・関心の向上や能力の育成を目的とした活動のうち、とくに優れたものを表彰する賞です。贈呈式では、申請数21件のなかから選考委員会がグランプリ候補に選んだ3件の代表者たちが、グランプリをかけて成果発表をおこないました。選考の結果、北九州市立大学 国際環境工学部をグランプリ、また、輝けミライの私!山陰ガールズプロジェクト、ならびに学校法人ノートルダム清心学園 清心中学校清心女子高等学校を準グランプリと決定し、賞を贈呈しました。また、奨励賞7件を選びました。

リカジョ育成賞から「日本人女性ノーベル賞受賞者」を

 今回も、第3回にひきつづき、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、オンラインでの開催となりました。各県の教育委員会や学校の先生、教育関係の団体のみなさんなど、約80名に参加していただきました。なお、前回まで理科教育賞の贈呈式を併催していましたが、今年度は対象となる理科教育助成の研究期間を1年伸ばしたため、今回はリカジョ育成賞贈呈式を単独で開催しました。

 はじめに、主催者を代表して日産財団理事長の久村春芳が挨拶しました。久村は、日産財団がイノベーションを生み出す人材、組織、社会システムを支援する思いを基本に置き、リカジョ育成賞を実施していると述べました。産業界で理系技術職における女性を増やすため、そのタマゴとなる理科好き女子を「リカジョ」と名付け、育成することとしたと、賞創設の経緯をあらためて伝えました。


主催者代表の挨拶をする久村理事長。

 つぎに、来賓代表として、賞を後援する内閣府男女共同参画局長の林伴子氏からご挨拶をいただきました。林氏は、2020年のノーベル賞で3人の女性研究者が受賞した一方、日本からは女性受賞者がまだ現れていないことを取り上げました。背景に、研究者に占める女性の割合が諸外国より低いことがあるとの認識を示しました。こうした課題に対し、同局が今年6月、「女性活躍・男女共同参画の重点方針2021」を策定し、大学の研究者の採用に占める女性の割合を2025年までに引き上げるなどの目標を掲げたことを紹介しました。「リカジョ育成賞は、次世代のロールモデルを示す素晴らしい取り組み。取り組みを通して日本人女性のノーベル賞受賞者が現れることを大いに期待しています」と述べました。


内閣府男女共同参画局長の林伴子氏。

鳥取・島根の女子中高生に理系の魅力を感じてもらう
成果発表① 輝けミライの私!山陰ガールズプロジェクト

 いよいよ成果発表会です。グランプリ候補3件の代表者たちが7分間で取り組みの成果を発表し、その後、5分間で選考委員たちからの質疑に応答しました。

左上から時計まわりに、選考委員長・長谷部伸治氏(京都大学特定教授)。選考委員・加藤圭司氏(横浜国立大学教授)。同・小野瀬倫也氏(国士舘大学教授)。同・森藤義孝氏(福岡教育大学教授)。同・人見久城氏(宇都宮大学教授)。同・千葉養伍氏(福島大学教授)。同・久保田善彦氏(玉川大学教授)。

 まず、輝けミライの私!山陰ガールズプロジェクトを代表し、国立米子工業高等専門学校物質工学科准教授の粳間由幸さん、同科4年生の石井まといさん、同科3年生の大山優輝さんが、「山陰に住む女子中高生に対して理系進路選択支援を行い理系の魅力を発信します」というテーマの取り組みとその成果を発表しました。

 プロジェクトは、鳥取県の同高専と、島根県の松江工業高等専門学校、それに島根大学の連携によるもの。両県の女子中高生たちに理系に興味・関心をもってもらい、理系の心理を選択してもらうことを目指しました。石井さんは、興味喚起の機会から企業説明会までの段階を踏んで、女子中高生たちをフォローする「理系女子を増やすためのファイブステップ」が企画の特色であるとアピールしました。大山さんは、先輩女子学生による出身中学校での講演会を多数開催したことを紹介し、「参加者は熱心に質問してくれて、とてもやりがいを感じました」と述べました。粳間さんは、「(1泊2日の)リケジョ合宿では、中学生、高校生、高専学生、大学生、大学院生が参加し、年齢差は最大10歳にもなったが、昼食をいっしょにつくるなど、緊張を解き、話しやすい環境づくりをした」と注力した点を話しました。

 今後に向けて、企画の見直しやオンライン企画の立案などをし、計画を実行に移していくと決意を示しました。


発表資料(抜粋)と、輝けミライの私!山陰ガールズプロジェクトのみなさん。

11回を重ねた科学研究発表会、規模を拡大
成果発表② 学校法人ノートルダム清心学園 清心中学校清心女子高等学校

 つぎに、学校法人ノートルダム清心学園 清心中学校清心女子高等学校研究開発部長の田中福人さんが、「『女子生徒による科学研究発表交流会の開催』による全国リカジョネットワーク」の取り組みとその成果について発表しました。

 清心中学校清心女子高等学校は、2009(平成21年)から、理系キャリアの仲間やモデルの不足を解消し、理系キャリアを想起させる女性を増やす目的で、「集まれ!理系女子 女子生徒による科学研究発表会」を企画してきました。交流を主体とし、また発表は女子生徒に限定しているそうです。中高生にかぎらず、大学院生や企業の若手研究者も招聘し、ロールモデルを提供してきました。これまで11回の数を重ねてきましたが、田中さんは「回を追うごとに参加者の規模や発表件数が増えていきました」と、発展性があることを強調。広島県で始まった会は、第6回は京都府、第7回以降は東京都で開催、また、2017(平成29)年から2019(令和元)年にかけては、全国各地での地方大会を並行して実施してきました。

 参加生徒へのアンケート結果から、理系進学に対する意識の向上などに効果があったと田中さんは説明します。2020(令和2)年は、新型コロナウイルス感染症の状況からオンラインで開催したとのことです。「さらにオンラインを利用して、規模を広げていきたい」と抱負を述べました。


発表資料(抜粋)と、発表者の田中さん。

苦手意識すくない女子小中学生に理系進路に接してもらう
成果発表③ 北九州市立大学国際環境工学部

 北九州市立大学国際環境工学部准教授の木原隆典さんは、「世界に羽ばたけ! 北九州サイエンスガールプロジェクト」の取り組みとその成果について発表しました。

 このプロジェクトは、理系の苦手意識がすくない小中学校の女子に理系進路に接してもらう機会をつくれば、女性の理系人材の増加につながるのではないかという考えのもと立ち上げたものと木原さんは説明します。国際環境工学部のほか、市教育委員会、また複数の企業と連携し、出張講義、実験・ものづくり体験、サイエンスカフェ・講演会を実施してきました。同市の4%にあたる小中学校女子が参加したことになるといいます。

 成果については、参加者のほとんどが、アンケートで「おもしろかった」と回答したと木原さんは紹介。さらに「注目したのは、出張講義に参加した女子中学生のアンケート結果です。進路を理系か文系か迷っている人は30%いましたが、出張講義で模擬授業や大学生・大学院生との座談会を実施したところ、そのうち83%が理系への興味・関心が高まった、73%が理系進路を前向きに選択しようと思うようになったと回答しました」と、ねらいどおりの成果を得られたことを強調しました。今年度は、対面とオンラインのイベントを併用しているとのことです。


発表資料(抜粋)と、発表者の木原さん。

受賞者を招き、リカジョ育成を考えるフォーラムを開催

 3件の成果発表の終了後、選考委員が審査をしている時間に、「リカジョ育成フォーラム」を開催しました。過去のリカジョ賞の受賞者2名に、オンラインで基調講演をしていただき、オンライン参加者からの質問にも答えていただきました。

 第1回リカジョ賞で「STEAM 教育の実践〜Picture Happiness on Earth〜」により準グランプリとなった日本科学未来館職員の宮原裕美さんは、「女子生徒を取りまく環境について」というテーマで講演しました。宮原さんは、社会には女性・男性に対する「無意識のバイアス」があるということを、国内外の研究事例などを示しつつ伝えました。理系の大学教授に、名前を女性か男性かにしただけの全く同じ経歴の履歴書を渡し、「雇わないか」と聞いたところ、能力や採用可能性などで女性が男性より低く評価されたという、米国の研究結果を紹介し、「ショックを受けました」と述べました。「無意識のバイアスはどこにでもだれにでもある。意識して、間違うことを自覚することから始めるのが大事」と締めくくりました。

 おなじく第1回リカジョ賞で「震災からの復興と地元産の農作物の風評被害を中学生の女子力で克服する」によりグランプリとなった福島県福島市立中学校教諭の菅野俊幸さんは、「10代女子の『だれかの役に立ちたいから始まる科学教育」というテーマで講演しました。顧問をつとめる科学部については「研究テーマをいかに見つけるかが最大の難所」とし、前任校時代を含め、2011(平成23)年の東日本大震災と福島第一原発事故からの復興につながる取り組みを科学部の生徒たちとしてきたことを紹介しました。「試行錯誤を支えてきたのは、だれかの役に立ちたいという生徒の心です」と振り返りました。


フォーラムで講演する宮原さんと菅野さん。

 質疑応答では、「(理系が苦手という)ステレオタイプを女子生徒自身がもっていて、理系進路を躊躇している場合のよいアドバイスは」という問いに、宮原さんが「理系か文系かという進路選択をやめ、どう自分が役立てると思うかから進路を考えるとよいのではないか」と応答しました。

 また、「部活動で得られるような醍醐味を小学校の授業で実現できないか」との問いに、菅野さんが「野外活動などでの子どもたちの『なんだろう』という(疑問をいっしょになって考える)ことが有効な手段ではないか」などと答えました。

甲乙つけがたい選考の末……グランプリを発表!

 ついに、結果発表の時間です。選考委員長の長谷部伸治氏が、発表に先立って委員たちの感想を伝えました。「輝けミライの私!山陰ガールズプロジェクトには、講演した学生自身の成長にもつながる取り組みとしてよいのではという感想が出ました。清心中学校聖心女子高等学校には、女子生徒自身の発表の機会を提供している点に高い評価がありました。北九州市立大学には、イベント回数や参加人数の多さを高く評価でき、サイトや冊子も洗練されています。選考は甲乙つけがたかった」と述べました。

 そして、長谷部氏から「グランプリは、北九州市立大学です!」と発表がありました。発表直後、木原さんは「多くの方にご支援いただき企画を実施できました。参加して理科が好きになった、理系に進もうと思うようになったという生徒が現れるよう、長く続けていきたい」と、受賞のことばを述べました。

 最後に、日産財団常務理事の原田宏昭が、協力者各位にお礼を述べ、「式典がさらなるみなさまの情熱と学びにつながり、次のリカジョを育てていく力になればと願いながら、第4回リカジョ育成賞を締めさせていただきます」と締めくくりました。


閉会挨拶をする原田常務理事。

 グランプリ、準グランプリ、奨励賞の一覧はこちらでご覧いただけます。

 受賞したみなさん、おめでとうございます! そして、リカジョ育成賞を支えてくださったみなさん、ありがとうございました! 今後とも、リカジョ育成賞へのご支援をよろしくお願いします。