日産財団

2025年度理科教育賞
入賞発表

大賞

賞状・トロフィーと副賞100万円

府中市立府中第六中学校

研究テーマ:生徒が自ら問いを立て、科学的に探究する理科授業『科学者の時間』の実践研究

優秀賞

賞状・トロフィーと副賞50万円

潮来市立延方小学校

研究テーマ:科学的思考力の育成を図る理科・総合的な学習の時間の学習指導
~車づくりを共通課題とした学習指導の工夫を通して~

芝浦工業大学附属中学高等学校

研究テーマ:科学的に探究する力と批判的に思考する力を育成する教科横断型授業
-プラスチックは本当に悪なのか-

学校法人浅野学園浅野中学・高等学校

研究テーマ:簡易CO2濃度計を用いた呼吸速度・光合成速度の測定と生態系の炭素収支測定への応用

ポスター賞

トロフィーと副賞20万円

三重大学教育学部附属小学校

研究テーマ:プログラミング的思考を育む「流域タイムライン」の教材化と実践

2025年度理科教育賞 講評

選考委員長 長谷部 伸治

府中市立府中第六中学校 「科学者の時間」と銘打った探究的な学習活動時間の設置は、生徒の主体的な学びを促す上で高く評価できる。生徒が自ら問いを立てそれを検証するためには、事前に教師からの十分な働きかけが不可欠であるが、本研究では単元に対する詳細な授業計画のもとで、資料の提供、KWLシートの活用、「ミニレッスン」という流れにより、上記の点に十分配慮されている。生徒の問いが進化している様子や教師により問いの内容を検証可能な実験につなげている過程も報告書から読み取れる。本活動を他単元へ展開するとともに、様々な場を用いて広く広報活動を行っていただきたい。
潮来市立延方小学校 3年から6年までが、車の製作という同じテーマのもと、各学年の理科の学習内容を活かした取り組みを実施している点を評価する。1人1実験として主体性を持たせ、かつ教材車、改造車、プロ車というような段階を設けている点や、プログラミング等をペアで行いコミュニケーション力を高める工夫をしている点も評価できる。上級生の作品を見た児童が次年度どのような工夫をするかなど、この取り組みを継続することで得られる知見は多い。継続しての実践を期待したい。
芝浦工業大学附属中学高等学校 「プラスチックは本当に悪なのか」というテーマは、生徒の探究意欲を高めることに大きく寄与したと判断する。マイクロプラスチックに着目し、研究計画から方法、実践、効果の検証に至るまで、十分に吟味され計画的に進められており、実践研究としての価値が高いと評価する。今回の活動は、プラスチックの「罪」を中心としたものであったが、プラスチックの持つ功と罪の双方に焦点を当てて活動できれば、「プラスチックは本当に悪なのか」という問いに対して、より深い考察が可能となると考えられる。本活動の継続による研究の進化を期待する。
学校法人浅野学園浅野中学・
高等学校
植物の呼吸や光合成速度を、CO2濃度計を用いて定量的に測定する実験は、生徒の科学的な素養を育成する取り組みとして評価できる。生徒の役割分担に配慮するなど、教育としても成果を上げている。また、学会等で外部からの評価を得る機会を設けたことも、生徒たちの自己肯定感の向上に大きく貢献していると判断する。定量的なデータが得られることで、生育環境の違いが呼吸や光合成速度に与える影響なども観察しやすい。CO2濃度計の活用は応用範囲の広い教育研究テーマであり、継続的な活動と他校への広報を期待したい。
三重大学教育学部附属小学校 理科の「流れる水の働き」から、水害について考えさせ、児童に自身が住む地域の防災計画を立てるところまで発展させている点を高く評価する。ポスターも研究の流れに添って要領よくまとめられており、ポスターを見た他校教員からも、「今後の授業づくりに活かせる多くのヒントをいただき」、「本校の総合的な学習の時間にも応用可能」などと、高い評価を得ている。「流れる水の働き」、「河川防災」、「プログラミング」を組合せた今回の取り組みは、どこでも参考となるものであり、成果を広く全国に発信していっていただきたい。

過去の受賞校