わくわくサイエンスナビ

早稲田大学先端生命医科学センターにて開催!

<開催日:2018年3月27日>

2017年度、第3回目となる「わくわくサイエンスナビ」を、東京都新宿区の早稲田大学先端生命医科学センター(TWIns)で開催しました。小中学校などから16人の先生や教育関係者のみなさんが参加し、「ロボットと医療」などのテーマで、先端研究の現場を体験するとともに、研究者のみなさんとの対話を深めました。

イノベーションは「コト」から始まる
工学で大切になる「モデル」の考え

まず、TWInsの元センター長で、早稲田大学理工学術院創造理工学部総合機械工学科教授の梅津光生先生に、「TWInsの機械系グループの紹介」という題で講演していただきました。TWInsは、早稲田大学と東京女子医科大学の研究者や大学院生たちがともに研究や教育をおこなう拠点。まさに医工連携の場です。


梅津教授

「1909(明治42)年、早稲田大学の理工分野として初めて機械科と電気科が開講しました。機械工学でなにを学ぶかが問われます。総合機械工学科では、体験する機会を得て、現場を知ることを重視しています。もうひとつ大事なのは英語力です。英語を教育できる先生を揃えるべく、変革しようとしています」

「日本にはいろいろなシーズ(製品化の可能性のある技術やノウハウ)はあるが、それが育たないといわれます。シーズとニーズの結びつきが悪く、失敗を許さないような文化があるからです。イノベーションとは、新たな価値を生み出し、社会の変化を起こすということ。エジソンは、『世の中が必要としているコトを見つけ出して、それから発明を始める』と言いました。モノから始めるのではないのですね」

つづいて、おなじく総合機械工学科教授の高西淳夫先生に、「ロボット工学と工学教育」という題で講演していただきました。


高西教授

「なぜ人型ロボットを研究するのかとよく聞かれます。人間がどう動いているかを工学的視点から見ることができるからです。工学者がロボットで人間を理解するときには、モデルを手に入れることができます」

「科学的な思考をするために重要な考え方がふたつあります。ひとつは、世界は相互作用に満ちているということです。もうひとつは、モデリング思考型の脳を鍛えるということです」

「一分野の研究をしていても、メカトロニクスではさまざまな問題にぶつかります。エンジニアは、自分の扱っている理論だけで研究が済むと思ってはなりません。ロボットは広い学問分野を統合したもの。トータルで解決していこうとエンジニアはがんばっています」

治療練習装置、人工心臓……
医工連携の研究を実感

その後、参加者の先生たちは、梅津研究室と高西研究室の若い研究者のみなさんに案内され、研究の現場を見学しました。どちらの研究室も医工融合型研究に力を入れていることがわかります。

高西研究室では、外傷を負った人の患部を縫い合わせる練習に使われる「縫合手技シミュレーター」や、顎関節症・嚥下障害などの改善に使われる「オーラルリハビリテーションロボット」などを見せてもらいました。また、同研究室で代々、研究を積み重ねてきた人型ロボットも紹介してもらいました。

 
縫合手技シミュレーター            人間形フルート演奏ロボット

 

また、梅津研究室では、心臓病患者の動いている心臓を模した「拍動下冠動脈バイパス手術・吻合手技訓練装置」や、世界的に評価の高い人工心臓「エヴァハート」などを見せてもらいました。参加者の先生たちは、実際の研究成果物などに手で触れて、興味津々のようす。

 
拍動下冠動脈バイパス手術・吻合手技訓練装置  人工心臓エヴァハート

研究者との対話
ロボットや教育の質問が次々と

そして、会場の部屋に戻ってからは、参加者の先生たちはお昼ご飯をとりつつ「研究者との対話」にのぞみました。梅津研究室からは助手の松橋祐輝さん、高西研究室からは准教授の石井裕之先生、助手の大谷拓也さんにも加わっていただきました。

 
手前から松橋助手、大谷助手、石井准教授 

「演奏ロボットを見学しましたが、人とおなじように考えて動くロボットをつくる上で、どんな課題があるでしょうか」

「足りないものがわかれば苦労はしないと思いますね。人型ロボットをつくるのは簡単ではなく、研究計画を立ても、思いどおりに行かないことが8、9割です。トライアンドエラーの繰り返しなんですね」

「将来に向けて、子どもたちにどんな教育をしていくべきでしょうか」

「子どもたちには、興味のきっかけとなるような環境を多くあたえることが大切だと思います。人間どこで伸びるかわかりませんから。公園で遊んでいても、端っこのほうでなにか真剣に見ているような子がいたら、『こっちに戻っておいで』と言わずに、ずっと興味あることをやらせたらいいと思います」

チームでワークショップに挑戦
学校で使える授業・単元をつくる

研究者たちとの対話のあと、参加した先生たちは班ごとに「ワークショップ」に臨みます。課題は「今回、知り得たことを題材に『かしこいロボット』という授業(単元)をつくるとしたら、どのような内容にしますか」といったもの。課題解決の方法に長けた日産自動車の社員たちが、ファシリテーター役をつとめました。

約1時間にわたり授業や単元のプランを立てた先生たちは、発表をしていきます。「TWInsで賢いロボットを見に行ってから、生活に役立つかしこいロボットの設計図を書かせる」「かしこいとはなにかを考えさせてから、未来にはどういうロボットが現れるかを書いてもらう」「人間とロボットの共通点を考えさせて、プログラミングを学ばせる」「人のしくみを身近なものを使って再現してみる」といった、さまざまな授業案・単元案が出されました。

 

 

「工学や科学では体で覚える体験が大切」
「エンジニアリング思考が求められる」

発表後、高西先生からコメントをいただきました。


高西教授

「エンジニアリング系やサイエンス系の教育では、体で覚える体験が重要です。みなさんもそれを意識されて案をつくったのではないでしょうか」

「インターネットが世界の山奥の地でさえ使えるようになり、インド人などは向上心が強く優秀です。一方で、精密機械は奥地では体験できません。日本はそうした分野の能力を上げるようにすると、将来、世界で戦いやすいのではないかと思っています。今日はありがとうございました」

最後に、「わくわくサイエンスナビ」プロジェクトリーダーの日産財団 美馬のゆり理事が、「エンジニアリングの発想」というトピックで話題提供をしました(発表資料はこちらでご覧いただけます)。

「仕事を得るため以上の教育が必要といわれるなかで、エンジニアリング・デザインの考え方が重要となります。それは、社会の課題解決に向けて、制約のもとで、問題を定義し、解を見つけ、プロトタイプを作成し、テストし、最適化するプロセスです。資源に限りがあり、世界は急速に変化するなかで、エンジニアリング・デザインはすべての人に必要とされるものです」

 
美馬理事                   2018年3月出版の『学習設計マニュアル』

途中では、美馬理事の共編著書『学習設計マニュアル「おとな」になるためのインストラクショナルデザイン』(北大路書房)にも掲載されている、2020年、30年、40年、50年、60年、65年における高齢者の人口比や平均寿命が書かれたシートが配布されました。ここに、自分の年齢や、人生への影響などを記すことで、未来の社会における自分の姿を想像します。

「人生100年時代を迎えようとするなかで、自分をバージョンアップさせていく必要があります。自分にとっても、相手にとっても、社会にとってもよいことになるような活動をしていくことが大切となります」

参加していただいた先生がた、ご協力いただいた早稲田大学のみなさん、どうもありがとうございました! 

※「わくわくサイエンスナビ」は今回で一区切りとなります。これまで多くの方々にご参加、ご協力をいただきました。本当にありがとうございました。

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