わくわくサイエンスナビ

東京大学生産技術研究所にて開催!

<開催日:2017年12月26日>

2017年度、第2回目となる「わくわくサイエンスナビ」を、東京目黒区の東京大学生産技術研究所で開催しました。小・中学校の先生たち17人が参加し、「住まい」や「建築」を中心テーマに研究施設に触れ、研究者と話し、授業案づくりに挑みました。

「社会に開かれた教育」を繰り広げる

はじめに副所長の志村努教授によるあいさつを聞きました。


志村教授

「生産技術研究所は日本最大の大学附置研究施設です。研究の領域は、工学分野のほぼ全領域をカバーしています。この20年ほど産学連携が全国でさかんになりましたが、そのモデルはこの研究所が1949年の設立以来、続けてきたものにあるといえます。そして今は、パリ、ロンドン、バンコク、トロントなどに共同研究拠点を設け、グローバルな視点で研究をしています」

「今日は、研究者との対話を踏まえて、また参加された先生同士で議論していただき、そこからサイエンス・リテラシーの高い子どもを育てるための教育実践のヒントが生まれればと願っています」

つぎに、生産技術研究所の「次世代育成オフィス(ONG)」を率いる大島まり教授からお話を聞きました。


大島教授

「ONGは、産業界、教育界、そして東京大学がともに新たな教育のモデルをつくっていこうという方針のもと、2011年に設置されました。研究者や技術者の直接参加による出張授業やワークショップなどの活動とともに、映像教材や実験教材を開発し、ICT(情報通信技術)を使って浸透・拡大をはかってもいます」

「教育は『知識の量』から『知識の質・深み』への転換点を迎えています。そして、『社会に開かれた教育』がひとつのキーワードとなります。アクティブ・ラーニングのように、みんなでつくり上げていくような探究型の授業の拡充化が求められています」

「ONGの取り組みが、科学技術と理科がどうつながるか、科学技術と社会がどうつながるかといったことの気づきになればと思っています。みなさんにとって、有意義なワークショップとなりますように」

実験住宅を使ったIoTの活用と築90年の大学図書館改修の研究に触れる

いよいよ参加者の先生たちは2班に分かれて、先端研究の現場へ。 訪れた先のひとつは、研究所内にある実験住宅「COMMAハウス」です。企業と共同で、広く普及するスマートハウスを目指し、効率的なエネルギーの使い方などについて実験がおこわれている場です。

研究に携わる野城智也教授から、「ここでは、さまざまな企業がそれぞれにもつ技術の“つなぎ方”をテーマとしています。IoT(モノのインターネット)では実際にモノを動かしてみる必要があるので、そのテストの場を大企業だけでなく、スマートフォンのアプリを開発する企業などにも提供しています」などと説明を受けました。

 
COMMAハウス                野城教授(中央)

また、建築学を専攻する川添善行准教授の研究室を訪れました。川添研究室は野城教授とともに、東京大学総合図書館の全面改修プロジェクトに取り組んでいます。

特任研究員の伊藤雄太さんから、「最新3D技術を活用した歴史的建築の改修」というテーマのお話を聞きました。「築90年のこの建てものの歴史的背景を調べたうえで、どう新しくするか、あるいは残すか、復元するかを議論しながらプロジェクトを進めています。コンピュータを使った3Dモデルやプログラミングなどにより、素材を設置する位置や高さなどを自在に検討できます。テントのたわみなども再現しています」。

 
伊藤特任研究員(左端)            3D技術の例

聞いてもわくわく 7人の研究者たちと対話

昼食のあとは「研究者との対話」の時間。志村教授、野城教授、大島教授、川添准教授とともに、ONGより、海洋資源の研究などをする北澤大輔准教授、新しい蓄電池の研究などを進める八木俊介准教授、工学リテラシーや宇宙物理学を専攻する川越至桜講師にも席についていただきました。参加者の先生の問いに、大学の研究者が答えていきます。

 
川添准教授(右から2番目)          北澤准教授

 
八木准教授                  川越講師

「もっとも技術的に感銘を受けた日本の歴史的建造物はなんですか」

「奈良の東大寺南大門ですね。中国から取り入れた当時としてはアバンギャルドな技術が残っています。それに、寄付を募ったり、遠くから木を運んだりした設計者の澄元のプロジェクトマネジャーとしての役割もすごいものがあります」

「研究者になった経緯はどんなものでしたか」

「暗記が苦手だったこともあり、大学では物理を学んだのですが、一つのことがわかった瞬間に、将棋の駒がばたばた倒れていくように次々とわかっていく快感を覚えたんですね。いまでもわからないことがわかると、研究室でガッツポーズが出ますよ」

「これが大事と思っていることを、学校の子どもたちに伝えられたらと思います」

「多様性は大切という感覚は大事だと思います。1+1が3になるような体験は自信につながっていくものだと思います」

学校で実践するための授業の案をワーキングショップでつくる

参加者の先生たちは、この日のこれまでの体験を踏まえて、学校で実際におこなうための授業案づくりに挑みます。

参加者の先生たちはチームに分かれて、1時間ほどのあいだに授業案をつくっていきます。各テーブルでは、日産自動車などから参加したファシリテーターが話し合いをサポートします。

 

そして発表の時間。各チームから、「未来のお家は?」というテーマで多様なエネルギー利用について考えるための授業、「科学技術と人間」の単元で家づくりとIT化の組み合わせを考えるための授業、「理想の家」をテーマに課題と向き合って解決法を考えるための授業案、「将来の自分の住む地域での家づくり」を題材に、昔の家の快適さや将来の家の技術を考えるための授業などの案が出されました。「ぜひ考えた授業案を、実際に学校でやってみたい」という先生の声も聞かれました。

 

発表を聞いていただいた研究者のみなさんから感想を聞きました。

「理科に閉じず、社会、歴史の側面もあって、授業・教科としての多様性も考えられていたのではないかと思います」

「授業内のグループワークでグループを組み替えるという案が出ましたが、価値のあることだと感じました」

「参加されたみなさんのように、広い視野をもっている先生のお話は子どもたちにとっておもしろいものだと思います」

「勉強することの背後には、いろいろな“つながり”があるということを伝えていけると良いのではと思います」

「教科書からはみ出たところを図書館で調べたくなるようなモチベーションが子どもたちに出てくるといいなと思います。私も刺激を受けました」

未来を生きていく子どもたちにデザインとエンジニアリングの思考を

クロージングでは、日産財団の美馬理事がデザインとエンジニアリングの重要性を説きました(資料はこちらでご覧いただけます)。


美馬理事

「20年後に社会に出て日本を支える、そんな子どもたちを私たちはいま育てているのです。単純労働や機械的作業がロボットや人工知能に置き換わることが予想されている一方で、デザインやエンジニアリングの能力を持つ人材の需要は増えてくるでしょう」

「デザイン思考は、問題を解決するため、そしてものごとを創造するためにあるものです。そこには、チームで取り組むもあるし、学んだことをさらに活かす過程もあります」 「またエンジニアリング・デザイン、つまり制約のあるなかで問題を定義し、解を見つけ、プロトタイプを作成し、テストし、最適化するといった過程が、より必要となっていきます」

「不思議だなと感じるだけでなく、どうしてなのか、どうすればよいかまで踏み込んで、解決、改善、創造をはかっていくことが『科学する』という行為だと思います。子どもたちへの教育は、まず私たち自身がそういう気持ちを持つことから始まります」

参加者の小中学校の先生みなさん、東京大学生産技術研究所の先生みなさん、ご参加・ご協力ありがとうございました!

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